1990年代は、1995年にWindows 95が発売され、1999年にはiモード搭載携帯電話が登場するなど、個人向けインターネットが急速に普及した時期です。
不特定多数の人々とネットを通じて繋がれる通信インフラが整うと同時に、出会い系サービスも急激に広がりを見せました。
出会い系の黎明期といえる時期は、特に1995年以降の90年代後半に該当します。
1995年以前、個人向けインターネットが普及する前の出会い系は、テレクラやツーショットダイヤルといった電話を利用したサービスが主流でした。
テレクラは、利用者が店舗に出向き、同じ店舗や近隣の拠点にいる異性とマッチングする仕組みです。
一方、ツーショットダイヤルは電話だけで利用可能でしたが、近くにいる相手を特定することが難しく、また携帯電話の通話料金が高いため、頻繁に利用するには不便でした。
インターネットの普及によって、ネット環境さえあれば匿名で簡単に登録でき、さらに相手を絞り込んで検索することも可能になりました。
仲介者を介さず、自分で相手を探してアプローチできる点が画期的で、出会い系の世界は一気に電話からネットへと移行したのです。
1990年代に多くのインターネットサービスが登場しましたが、セキュリティ面の整備は不十分でした。
ネットオークションの詐欺が増え、出会い系においても詐欺やトラブルが発生していたのです。
ただし、1990年代の出会い系は高額な課金が少なく、詐欺の手口も2000年代以降に比べると限られていました。
詐欺被害の割合が現代ほど高かったわけではありませんが、出会い系サービスそのものが一般的に認知されておらず、真剣交際に発展するケースはそれほど多くありません。
メールを通じてインターネットでコミュニケーションが取れること自体が画期的だったため、多くの人は知人や家族との連絡手段としてインターネットを活用していました。
不特定多数の人との出会いをネットで求めるのは、一部の限られた層にとどまっていたのです。
また、現代の出会い系に多く見られるサクラや勧誘目的の業者は少なく、当時は暇つぶし感覚で年齢や性別を詐称してやり取りする一般ユーザーが多かったのも特徴です。
現代では、小学生でも1人1台スマートフォンを持ち、動画やゲームを楽しむのが日常的になっています。
しかし、1990年代はインターネットが普及し始めたばかりで、全ての人が使っていたわけではありません。
また、当時「出会い系」などのキーワードで検索しても、情報量は極めて限られていました。
信頼できるサービスを見つけるには口コミや友人からの情報が頼りで、出会いに対する熱意がある人や情報通の人が主に利用していました。
ネットを導入していても出会い系の存在を知らない人や、そもそもインターネット自体を使わない人も多い時代だったのです。
黎明期とは、新しい時代が始まる前の試行錯誤の段階を指します。
1990年代の出会い系も、業者や利用者が模索しながら利用していた時期と言えるでしょう。
1990年代の出会い系ユーザーは、テレクラやツーショットダイヤルから移行してきた層と、インターネット普及に伴い新たに始めた層に分かれていました。
テレクラやツーショットダイヤルは援助交際を目的とした利用者が多く、出会い系でも援助交際が拡大し、90年代後半には「援交ブーム」が巻き起こります。
一方、インターネットを利用して出会い系を始めた人の多くは、メッセージのやり取りだけで満足する場合が多く、暇つぶしや軽い目的で地域を問わず相手を探すことが主流でした。
そこから真剣な交際に発展することもありましたが、インターネットの出会いに対して不安を感じる人も少なくなかったため、金銭のやり取りなしで実際に会うことに抵抗がある人が多かったのも事実です。
その後、情報やセキュリティが向上し、2000年代前半には出会い系が一つのブームとして確立されていきます。